イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマとは、既存市場を一変させてしまうような「破壊的イノベーション」は往々にして優秀な経営を行っている大企業からではなく、新興企業から生まれるというジレンマのことを指す。
市場シェアを獲得している大企業はステークホルダーへの影響を省み、経済的合理性の高い自社製品の性能を向上させるイノベーション(持続的イノベーション)を引き起こすことを中心にビジネスを考えがちである。その理由は複数あるが、たとえば既存市場で獲得している規模の経済性をより活用することを優先する点や、現在の市場に存在する既存顧客のニーズを把握しやすく、そのニーズに合致した小さな改良を繰り返してしまうという点が挙げられる。
一方で、既存市場にとらわれず市場環境を大きく変えるイノベーション(破壊的イノベーション)は、当初、その市場がまったく存在しないため、市場規模の判断がつかないことに加え、開発当初は既存市場が求める性能を満たしていないことが多い。それゆえ大企業では手が出しにくく、新興企業のような小さな組織の方が着手しやすいのである。
上記は一例であり、各企業によって文化や組織体制が異なるため、一概に大企業が「破壊的イノベーション」を起こすことができないとは言えない。しかし、往々にして既存の市場に注視し、健全な経営を行おうとする大企業であるほど「持続的イノベーション」を推進し、「破壊的イノベーション」に対応することができないのである。
(張 智視)