IRR
IRRとは、Internal Rate of Returnの頭文字を取った略称で、日本語では「内部収益率」という。投資の意思決定を行う際の重要な判断基準のひとつであり、投資によって得る将来キャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値とが釣り合うような割引率を指す。
ここでいう「割引率」とは、将来のお金の価値を現在の価値に換算(割引)するときの利率である。お金の価値は時間軸によって変化し、現在価値が最も高く、将来価値は低くなる。これは、お金は早く得られるほど再投資による収益化が見込めることから、将来より現在の方がお金の価値は高いと考えられるためである。
将来価値と現在価値は、以下の計算式で表せる。
現在価値×(1+r)^n=将来価値
※ r:年利 n:年数
現在価値=将来価値÷(1+r)^n
※ r:割引率 n:年数
IRRは、「現在の投資額」と「投資によって得られる将来キャッシュフロー」から求められる。以下がその計算式で、r=IRRとなる。
※C0:初期投資額(マイナスの値) Ct:当該投資が生み出す各期のキャッシュフロー(t=1,2,3,…,n) r:IRR
IRRを投資判断基準の指標として用いる際のメリットとして、「投資期間全体を通じた収益性を現在価値の基準で算定できる」点が挙げられる。
投資期間全体の収益性を現在価値に換算するため、投資期間が異なる複数の投資対象の比較検討が可能である。なお、一般的に投資ファンドによる投資については、投資回収までの期間が3~5年程度であれば、IRR法は適しているとされる。
一方、IRRのデメリットとしては「投資規模や利益の大きさを考慮できない」点が挙げられ、IRRの数値のみで判断した場合、収益額が低い投資案件を選定してしまう可能性がある。
たとえば、「投資額1,000万円、IRR5%、利益50万円」の案件Aと、「投資額50万円、IRR10%、利益5万円」の案件Bがあった場合、IRRのみで判断すると、案件Bの方が優先的な選定候補となってしまう。
(能登 優)