高圧直流送電(HVDC)

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高圧直流送電(HVDC)とは、電気の送電を直流・高電圧で行うシステムを指す。
直流電流は交流電流に比べて送電時の効率性が高く、電力をあまりロスすることなく遠くまで送電できる。しかしながら直流電流の電圧変換は難易度が高く、トータルで見ると交流電流のコストの方が安くなることから、これまでは利用されてこなかった。近年、半導体の進歩により直流電流の電圧変換が可能となったこと、また長距離での送電ニーズが生まれてきたことなどから、高圧直流送電(HVDC)が注目を集めつつある。

近年、日本では洋上風力発電の開発が精力的に進められているが、洋上風力発電の適地は大需要地から遠く離れているため、長距離を効率的に送電する手法が求められている。直流電流のコストメリットは、特に800km以上(架空送電線)、50km以上(海底ケーブル)で生じるといわれており、洋上風力発電でつくられた電力の送電に適している。政府も電力の長距離輸送の実現に向けて、2021年より「長距離海底直流送電の整備に向けた検討会」を設定し、長距離海底直流送電のルート候補の洗い出しや、敷設・運用における課題の洗い出し、敷設にかかる費用について議論を重ねている。

EUでは国家間にまたがる海底直流送電網が整備されつつあり、中には500kmを超える超長距離海底ケーブルも敷設されている。日本の海底地形は遠浅なヨーロッパとは異なり、深く切り立った地形に囲まれているため、1500m級の水深に耐えられるケーブルなど、独自の課題を解決する必要がある。

(羽生 直人)