人的資本経営
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大化することで中長期的な企業価値向上へつなげる経営手法である。企業と個人の自律的な関係において、互いに選び合い価値創造をするという考え方で、2020年に経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート」により注目されるようになった。
2021年改訂コーポレートガバナンス・コードでは新たに「人的資本に関する開示」が追加され、2022年には「人材育成方針」「社内環境整備方針」などの有価証券報告書への記載が必須化されるなど、人的資本に関する対応・情報開示が要請されるようになった。
人的資本経営を推し進めるため、人材版伊藤レポートでは「3P・5Fモデル」と呼ばれるフレームワークが必要とされている。
● 3P:人材戦略を検討する際に必要な三つの視点(Perspectives)
(1)経営戦略と人材戦略の連動
(2)As is ‐ To beギャップの定量把握
(3)企業文化への定着
● 5F:取り組むべき人材戦略の五つの要素(Factors)
(1)動的な人材ポートフォリオ
(2)知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
(3)リスキル・学び直し
(4)従業員エンゲージメント
(5)時間や場所にとらわれない働き方
2022年に公表された「人材版伊藤レポート2.0」では、これらの枠組みを実行する上でCHRO(最高人事責任者)を設置し、全社的経営課題を抽出することで、経営戦略と人材戦略を連動させることが最も重要なステップだとされている。
(久保 明日香)