家庭内における電子タグ(RFID)を活用した実証実験(イエナカ実証実験)を実施商品の利用や在庫状況を踏まえて消費者に役立つアドバイスを提供
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:池田 雅一)と一般社団法人リテールAI研究会(所在地:東京都千代田区、代表理事:田中 雄策)は、 経済産業省より受託した「令和2年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した付加価値創出検討事業)」において、電子タグ(RFID)を活用した消費者への新たな付加価値提供に関する実証実験(イエナカ実証実験)を実施しました。
1.背景と目的
世界中でAI、IoT、ビッグデータなどの新たな技術が急速に広がっています。加えて、今般の新型コロナウイルスの影響により在宅時間が増え、日本国内では電子商取引市場が急拡大しています。店頭での消費者との接触機会が減る中で、わが国の流通業においても、新技術を活用した消費者ニーズへの適切な対応や新たな接点の創出などが求められています。また、消費財サプライチェーンの持続可能な成長にとっては、消費者に対する新たな付加価値の提供を行っていくことが重要となっています。
電子タグ(RFID)を用いて情報収集をすることにより、必要以上の情報が提供されてしまう可能性のあるカメラに比べると消費者の心理的な負担は少なくなります。また、商品を提供するメーカー、広告代理店などにとっては、購入後の実際の利用状況を知ることで、より消費者に寄り添った商品開発やプロモーションに役立てる情報が得られるというメリットが期待できます。
2.実証実験の概要と結果
本実験では、家庭で購入したオーラルケア、化粧品、飲料、菓子などの商品に電子タグ(RFID)を貼り付け、洗面台や冷蔵庫などに設置したアンテナを通じて行動ログを収集しました。これをもとに、利用状況や在庫状況に応じた付加価値情報を、スマートフォンのアプリを通じて消費者モニターに提供しました。
① 洗面所もしくはキッチンにアンテナ・リーダーを内蔵したストッカーを設置。家庭内在庫および購入した対象商品に電子タグ(RFID)を貼付後、実験専用スマートフォンのコミュニケーションアプリ「LINE」のイエナカ実証LINE公式アカウントから、商品のバーコードと電子タグ(RFID)をスキャンして商品を登録。
② 日常生活における対象商品の動き(歯ブラシが使われた、ビールが飲まれたなど)や在庫状況といった情報をもとに、家にある商品のストック状況(外出先からでも把握可能)、冷蔵庫の食材から提案されたお薦めレシピなどの情報を、アプリを通じて消費者モニターに提供。
③ 商品の利用頻度、継続度に応じてポイントを付与。
この結果、電子タグ(RFID)を用いた付加価値サービスの体験後、20人中15人が今後も利用したいと回答。事前の期待値が高かったものの、事後でもほぼ変わらない利用意向の高さが示され、付加価値が実感されたことが伺えます。この体験を通して「生活がより便利で楽しくなりそう」と評価され、また、「無駄な物を買わなくなった」という声も複数挙げられました。(図1)
また、実験結果から、提供される情報やサービスが魅力的であればRFIDタグのコスト(1商品につき5円)を上回る価格上昇も許容される可能性も示唆されました。今後は、家庭内の利用に向けたより低価格の読み取り・通信機器の改良・開発が求められるとともに、家庭内消費データの利用におけるプライバシー保護に関するガイドラインの整備などが検討課題として挙げられます。
図1 実証実験実施後の利用意向評価結果
3.実証実験の実施内容
【実施期間】 | 令和3年1月18日(月曜日)~令和3年2月14日(日曜日) |
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【委託事業者(実施主体)】 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 |
【協力事業者】 | 一般社団法人リテールAI研究会(メーカー、広告代理店等)、 株式会社インテージ、帝人株式会社、ヨメテル株式会社 |
【実験場所及び対象商品】 | 洗面所:オーラルケア、化粧品、ハンドソープ、ランドリーなど キッチン:飲料、菓子、消臭剤、日配品など |
図2 実証実験の枠組み
4.各組織の概要
一般社団法人リテールAI研究会
一般社団法人リテールAI研究会は、リテール分野におけるAIテクノロジー活用に関する情報の共有や知識の獲得、企業の垣根を越えた連携を目的に2017年5月に発足。メーカー、卸、小売等を中心に200を超える会員企業で構成されています。
ホームページ: https://retail-ai.or.jp/
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。東京・名古屋・大阪を拠点に、民間企業向け各種コンサルティング、国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援、マクロ経済に関する調査研究・提言など、幅広い事業を展開しています。
ホームページ: https://www.murc.jp/
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