わが国における原子力防災施策は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故を経て大きく見直されました。原子力規制委員会が定める「原子力災害対策指針」に基づき、国や全国の原子力発電所周辺の自治体では、原子力発電事業者が取り組む発電所自体の防災対策に加えて、発電所の外部(オフサイト)における防災対策に一層力を入れるようになりました。原子力災害対策重点区域※における住民の避難は「広域避難計画」に基づいて実施することが定められています。原子力災害発生時の避難を円滑に行うためには、原子力事業者による様々な対策や国による取組に加えて、関係する地域の自治体や住民が、原子力災害を自分事として捉え、計画においてどのような避難行動が定められているのか理解することも重要です。※原子力災害が発生した場合に、その影響が及ぶ可能性があり、重点的に原子力災害に特有な対策を講じておくべき地域原子力災害発生時の住民避難は、対象エリア内の住民が比較的短時間の内に遠方に避難するという特徴があります。そのため、特に避難に時間がかかる、あるいは長距離の避難が難しい避難行動要支援者に対する支援策の検討や、支援者、避難車両等の確保を含めた事前の準備を計画的に進めることが重要です。 また避難先自治体における避難住民の受入れや避難生活への移行を円滑に行うためには、避難先になる自治体との連携や避難先自治体での受入れ計画の作成等も重要なテーマです。社会福祉施設や医療機関の関係者を交えたワーキング等を通じて、現場の声を反映した実効性のある計画類の作成を支援します。事態区分●PAZ 内の施設は、早い段階での避難指示に備えて、速やか警戒事態に避難準備(避難場所、避難手段の確保等)を開始する。(警戒事象)●UPZ 内の施設は、情報共有体制を整える。●PAZ 内の施設は、自治体からの避難指示があった場合は、避難手段の確保等の準備が整ったうえで避難を開始する。ただし、入所者の状況によっては屋内退避も検討する。施設敷地緊急事態(特定事象)●UPZ 内の施設は、屋内退避の準備を開始する。●PAZ 内の施設は、既に避難を開始している。放射線防護設備を有する施設は設備を稼働し屋内退避を継続し、避難手段の確保等の準備が整ったうえで避難する。全面緊急事態●UPZ 内の施設は、自治体からの指示に基づき屋内退避を実施して避難・一時移転の準備を行う。また、緊急時モニタリング結果等により避難手段の確保等の準備が整ったうえで避難を開始する。【緊急事態区分に応じた要配慮者施設の対応事例】施設の対応(避難・屋内退避)(原子力緊急事態)◆「広域避難計画」の作成・改訂 地域における避難行動の基礎となる広域避難計画について、最新の知見や他地域の動向を踏まえて見直しを支援します。①福島第一原子力発電所事故を踏まえた規制の見直し②地域住民の認知度の向上③避難行動要支援者に対する対応、避難先自治体との連携◆避難行動要支援者に向けた各種ガイドライン・計画類の策定◆一時集合場所や放射線防護施設の開設・運営のための準備原子力災害発生時の行動手順をわかりやすく示した「アクションカード」の作成や、「実動訓練」の実施等を通じて、自治体の職員や住民の皆さんが災害時に「一時集合場所」や「放射線防護施設」を速やかに開設するための取組を支援します。◆避難手段の多様化に関する検討自家用車あるいはバスによる避難に加えて、それ以外の多様な交通手段の活用可能性を探る取組も進められています。交通分野の知見を有する研究員も加わりながら、関係者へのヒアリングなどを通じて、利点や課題を整理し、活用可能性の検討等に取り組みます。基本的な考え方、重要ポイント特徴原子力災害に備えた防災施策原子力発電所施設外(オフサイト)における各種取組について11
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